屋上防水のカバー工法
「屋上防水について保証期間10年が過ぎるので補修工事を検討しましょう」とか、「漏水があるので改修工事をしましょう、あるいはシートが劣化しているので全面改修工事を検討しましょう」など、建物において屋上防水の劣化対応改修工事は避けられません。
屋上防水の材質は多種多様であり、簡単に整理すれば、アスファルトシート防水、加硫ゴムシート防水(自転車のチューブのよう)、塩ビシート防水(床などに貼られているものと同様のイメージ)、ウレタン防水、ポリマーセメント系塗膜防水材などがあります。(塗料は防水材ではありません)
防水材は適材適所で使用されるべきであるが、現場に行ってみると、間違った材料選択・やるべきことをやっていない工事などが見られます。
注意すべき点が別にあります。既存防水シートは不具合箇所(めくれ・膨れ・破断など)を直せることです。つまり全面改修工事の必要があるのか否かなのです。
アスファルトシートはトーチで加熱すればシート相互間は簡単に溶着します。加硫ゴムシートは重ね貼りが簡単にできます。塩ビシートはジョイント部ならびに重ね部の溶着が可能です。ウレタン防水も重ね塗りができます。ポリマーセメント系でもウレタン防水同様塗り重ねが可能です。つまり全面改修工事(カバー工法)は必要ないと考えて差支えないが、よほどひどい劣化の場合のみ全面改修(カバー工法)を検討すべきです。
なぜカバー工法を提案するのか?「全面改修でなければ売り上げがながらない」これが答えです。施工業者も材料メーカーも部分補修では売り上げが伸びない。
設計監理者の中にも、カバー工法を進める人がいます。マンションであれば管理組合の財政の事など真に考えていない人といえると思います。
以前に管理組合の方よりご相談があり、「管理会社が屋上防水のカバー工法による全面改修を進めてきているのだがどうだろうか」といった内容でした。ご返答は「全面改修の必要なし、不具合箇所の部分改修で充分」であり、その結果管理会社の提示額の3分の1の費用で終わった例があります。
修繕積立金が乏しい管理組合が殆どです。屋上防水も適切な保全を行なえば、30年以上何の問題も生じないと判断できます。よほどひどい工事を行っていない限り。