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調査と診断

マンションに限らず全ての建物は新築直後から劣化が始まります。

よく建物の調査の話が出てきますが、調査と一言でいっても目的によって全く内容が異なります。

①大規模修繕工事を目的とする調査

②長期修繕計画の見直しや作成を目的とする調査

③建物の劣化状態を把握するための調査

大きく分けて以上の3パターンがあると思います。①の大規模修繕工事を目的とする調査の場合は、その後の工事を想定して行う調査だから、工事に費用がいくらかかるか金額算出のために必要となる劣化程度と大きさ(数量)を求めなければなりません。したがって②と③は①と比較すると軽度な調査となります。

診断は修繕を実施するに際し、劣化の原因を特定し、それに対し適切な修繕方法を導きだすための判定です。誤った修繕方法を行うと、再び同様もしくはそれ以上の不具合が生じることだって考えられます。したがって同じ調査でも3パターンによって内容が大きく異なります。大規模修繕工事の実施時期を検討する調査は、③の調査で十分です。

調査会社に調査を依頼しその報告書を見たことがありますが、一言でいえば目的のはっきりしない調査のため、大規模修繕工事のためには全く役に立たない資料だったことを思い出します。

調査の後その結果を管理組合の皆さんに報告することがよくあります。その際には専門的な内容がびっしりの資料ではわかりにくいので、要約した資料で説明する場合があります。場合によれば説明会の後、屋上など実際の建物を見ながら報告内容を説明すればよりよく理解をして頂けます。

大規模修繕の時期

マンションの管理組合役員の方からよく出てくる質問に、「大規模修繕の時期はいつが適当なのだろうか」です。

結論から言いますと、「大規模修繕の時期は建物の劣化状態を正しく把握して決めるものである」というのが正しい答えでしょう。劣化状態を正しく把握するためには、正しい劣化調査と合理的な判断が必要となります。この際の調査は外見上の劣化を調べることで十分です。

このように調査を行って判断すればよいのだが、ここで難しいテーマがある場合があります。それは外壁タイルの浮きを伴う剥落の危険性の問題です。屋上防水などは足場を架設しなくてもある程度の補修で劣化を防止することができます。だから大規模修繕工事とは切り離して屋上防水の修繕工事を行うことは珍しくありません。

外壁が汚れている。シーリング材が劣化している。鉄部の塗装が劣化している。大概これらの劣化はまだ致命的な損傷を与えるレベルに至っていないのが一般的なように感じます。

ところがタイルの剥落の危険性は看過できません。したがって足場を架設すれば大がかりな出費が伴います。そこで考えたのが、多少費用が掛かっても外壁タイルの浮き状態をより詳細に把握する目的で、ブランコ調査を行い(階数にも限界はある)、調査の結果、浮きの程度が少ない場合の修繕工事は簡易なゴンドラを使用し高所作業を行うことがベターな選択ではないだろうかと思います。工法としては特殊なピンで固定します。このような考え方は、大規模修繕工事に要する修繕積立金の不足を考慮した場合です。

仮に浮きの程度が方範囲にわたっている場合は、仮設足場を組み立てた大規模修繕工事を行うべきでしょう。当然十分な費用が確保されていれば、ベストの選択としてすべての部位についての大規模修繕が望ましいのは言うまでもありません。

大規模修繕工事の実施時期について、工事関係者は早急に実施すべきだと主張する場合がありますが、すべてのマンションで修繕積立金の残高が十分であると言えない状況であれば、なおさら現実対応したより良い選択しかないのが実情です。

大規模修繕の時期などについては、工事に携わらない人、管理組合の立場に立てる専門家(マンションに詳しい一級建築士など)に相談されることをお勧めします。

更に検討すべきは、調査の結果を理事会と総会に諮り、役員の変更があっても調査結果に添った大規模修繕工事の計画を維持すべきでしょう。そして修繕委員会の活動も継続して行うべきでしょう。

ブランド力?

時計や家電などの工業製品だったらブランド力を信じて購入してもいいだろうと思いますが、建設工事の場合は工業製品と異なり人力で作り上げる部分が多く、作り手の側により出来具合が異なります。

「良くテレビの宣伝によく出てくる大企業だから、高品質でアフターサービスも間違いなくやってくれるに違いない」といった認識をお持ちの方は多いと思います。でも実際の現場を経験してきた者にとると、本当にそうかなという事例に事欠きません。

一部の工事業者は“やり逃げ”や、筋の通らない“言い逃れ”をよく言います。逆の立場で考えてみると、継続的に発注してくれるお客は大事にし、スポット的な仕事、しかも二度と受注の可能性のない庶民の仕事に力点は入れられない。これが実態かもしれませんが、本当はこれではダメなのでしょう。残念ながらブランド力をもった工事会社であっても、現実のアフターフォローの対応には満足できないのが実感です。

それでは我々庶民はブランド力を優先するのか、もしくは地域密着の企業を、そして何事も人がやることですから、その人の能力とそれをバックアップする体制を持った企業かがお付き合いをするポイントとなりそうです。

企業も利益を確保しなければ継続的に活動を維持することができなのはわかりますが、適正なサービスと説明責任を果たし、客先からの“納得”を得る活動にも欠けていることに直面することが多くあります。企業ブランドが褪せます。

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