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ツボ

人の体でもツボでないところに鍼やあんまをしてもらうと、コリが取れるどころか不調になってしまいます。

大規模修繕工事でも同じで、“ここは部分補修・ここは防水・ここは塗装・ここは取替え”といったように、適材適所の修繕方法があります。

ところが“防水業者は防水・塗装業者は塗装・金物業者は金物・電気業者は電気・配管業者は配管”といったように専門分野が分かれている。建物の修繕工事はそれらを統合して成り立っているのです。

細分化されている工事項目を統合して、建物の最適化を効率良く進めるプランを作るのが設計コンサルタントの役割のひとつでしょう。

実際、改修後の現場を見てみると、ここはウレタン防水をキチンとやらなければならないところに塗装をかけていたり、雨かかりで錆から腐食に至る鉄部の部材をステンレス製の部材に交換しなく塗装してみたりと、建物を守るためには必ずやらなければならない工法をやっていないことを見かけます。これは自社の得意分野で済ませれば手間もかからず楽だからです。

設計コンサルタントも同様です。大規模修繕工事は1回で終えるものではないはずです。調査過程で給排水管の状態を調査しておくべきところをやらなかったり、改善すべき点をおろそかにしたり、とにかく簡単で自社の得意分野でことを済まそうとする傾向があります。

1回目の大規模修繕であっても侮れません。いい加減な修繕工事だと必ず2回目の大規模修繕工事に悪影響が重なります。これは費用面でも多大な損失となるものです。(実際に2回目・3回目の修繕工事で複数件経験済み)

工事現場の品質管理は一義的には施工会社の現場代理人(監督)によりますが、工事請負契約書に“どの部分の修繕をどのような材料と施工方法とする”と明示する必要があります。

この書類を明示していない設計コンサルが多いようです。契約図書に明示することで建物の修繕方法を指定し、契約通りの工事となるように監理する。そのことがマンションの長寿命化とコストの低減へとつながってゆきます。

収益計画

企業には年度毎の売上と収益の目標があります。

マンションにおいては長期修繕計画を作成し、将来想定している大規模修繕工事のために引き当てる資金として積立金をプールしています。

長期修繕計画で想定している大規模修繕工事の時期と、建物の劣化状態による修繕工事の時期とは必ずしも一致するとは限りません。

一部の管理会社は長期修繕計画の修繕年次をタテにとって、「そろそろ修繕工事の時期となりましたので具体的な準備に係るための調査を行います」などとして、自社関連の会社に受注誘導するような動きを取ります。

一概には言えないが、管理組合のための大規模修繕計画ではなく、管理会社の長期収益計画とみなされるような実態があります。

「屋上防水の保証が10年、保証期間が過ぎましたので、屋上防水の改修工事が必要です」、これとて建物の劣化は人の体と同じく、年数を重ねたからどの建物でも劣化レベルが一律に進行することはありません。築年数を重ねると個別の劣化程度の差異は大きくなってゆきます。

実際には部分的な補修で事足りものを、全面改修することを進めている場合もあります。これではいくら積立金があっても追いつきません。正しい現場の判断を経ずに修繕を繰り返すのであれば、工事会社のための短期収益計画でしかありません。

建物の修繕が必要か否か、また部分的な修繕を行うのであればどのような手法が可能なのかを含め、第三者的で管理組合の立場がとれる建築の専門家の意見を求めることをお勧めします。

マンションの大規模修繕時期としておおよその目安はあります。その時期は「12年周期」で考えられることが多いようです。新築時の長期修繕計画では、第1回目の大規模修繕を12年後と設定している場合が一般的でしょう。

建物は年々劣化してくるのは当然としても、その劣化進行速度と劣化の程度はどの建物でも時間経過に沿って一律に進むわけではありません。

建設初期の施工品質・立地による影響(海に近い、山に近い、工業地帯、市街地など)・建てた後の維持保全・使用環境・その他などによって、人の体と同様に建物劣化は個別に異なり、時間経過とともにその差異の開きは大きくなります。

大規模修繕の時期として判断される要素として、(1)築年数が相当経ったから、(2)外壁など建物の汚れがひどくなったから、(3)長期修繕計画で決まっているから。以上の三つの動機で判断されているようです。

しかしよく考えてみると10数年間の間に屋上防水は改修しているケースを見かけます。そうすると建物を傷める要因が少なくなっているのだから、築年数に関係なく大規模修繕工事が必要なのか?といった疑念が出てきます。また外壁などの塗装の劣化はあっても、躯体を守る性能は維持している場合が殆どです。

つまり築年数を経ていても、建物の劣化実態を正しく把握して、直ちに取り組むべきか、取組むのであれば大規模修繕とは切り離してどの部分の修繕を行うのか、本格的な大規模修繕を考えるのであれば何年後を目標に準備して進めるのかなど、多角的な判断が必要に思える。

以上の点から赤ひげ建太郎が発するコメントで、「まだ本格的な大規模修繕は3・4年先でも大丈夫だが、現段階で必要な修繕はココとココです。修繕方法はこのようにして行います」といったアドバイスをする場合があります。

とにかく大切な修繕積立金を効率よく活かすためにも、大規模修繕の時期を定型的に捉えない方が良いと思います。そのような思いを持たれたら、赤ひげ建太郎のような専門家に相談して、簡単な事前の調査を行うことをお勧めします。

12年に1度行われることの多いマンションの大規模修繕だが、その資金となる修繕積立金が十分に蓄えられているマンションは少ないです。特に仮設足場代に多額の費用を要することもあって、修繕周期を長期化することは、財政的な見地から見ると効果は絶大です。

くれぐれも施工サイドの長期収益計画に惑わされないように。

 大規模修繕工事の施工会社の選定は、管理組合員の貴重な積立金を予算化して行う事業であるから、選定経過の透明性の確保が最も要求される事項です。

特定の会社からの推薦で安易に決めたり、どの業者でも良いのでもありません。公共事業と同じレベルの公正で公平な選定方法が必要となるのです。(選定手順は管理組合役員の皆様と共有しながら以下のとおり進めます)

1.見積を依頼する会社を公募します。公募に際し一定以上の資格条件を付します。

2.設定した条件に見合う施工会社を公募します。(管理組合員にも呼び掛けのお願いを行います)

3.応募してきた会社の書類審査を行い、設定条件を満たしている会社に見積依頼の通知と見積に必要な資料を配布します。

4.現場の確認の目的で現場説明会を行います。

5.質疑応答を行います。

6.各社から見積書を提示してもらいます。

7.見積内容の比較資料を作り、管理組合役員様と協議し、ヒアリング会に出席してもらう会社を選定します。

8.ヒアリング会で現場を担当する予定者との質疑などを行います。ここで価格交渉先を選定します。

9.管理組合の予算と見積額のギャップを埋めるための交渉を行い、最終的な一社に絞り込みます。

10.理事会に対し1~9の報告を行い一社に絞り込んだ経過を説明し、理事会で絞り込んだ会社を内定し総会の議案(工事請負契約の同意決議:工事概要と発注金額→積立金の取崩し)として準備します。

11.総会承認で工事会社と請負契約ができます。これらの経過を経て工事が始まります。

以上 一連の事務手続きはコンサルタントである設計スタッフが管理組合の事務代行として進めます。当然専門家として価格交渉の進行もお手伝いをします。もちろん総会決議を経ないと工事に取り掛かれませんので、全ての場面の資料を整理し、どんな質疑にも応じられるようにしておかなければなりません。

これらの経過を考えると、お役所の公共事業の発注と似たところがあります。入札という手続きではなく、見積資料は各社の企業努力として単価のみを自発的に入れてもらい、なおかつヒアリングで現場担当者の力量や相性を確認する、そして最後には価格交渉となります。

全ての手続きは管理組合の合意形成がベースにあるからなのです。一部の人の疑念や不満を残せば、マンション自体のコミュニティを毀損することにもなりかねません。

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