失敗しない大規模修繕のために
マンションの管理組合の役員にとって大規模修繕工事は大きな負担となります。通常の管理運営であればその負担はさほどではないでしょうが、大規模修繕は人生で何度も経験するものではありません。
少し大規模修繕の事を考えてみますと、準備に始まりそして終わりまでの期間が任期中で片付くものではなく長期にわたることです。そして居住者の合意形成に神経を使うことでしょう。また工事中のイメージが湧かないこともあって、修繕委員会・理事会・総会の進め方、さらには施工業者をどのようにして決定すればいいのか、工事の手抜きは心配ないかなどなど。心配事は尽きません。
私たちはマンションの大規模修繕工事に限らず、社会生活を送るうえで、節目節目では誰を味方に付けるかで行く末が決まるといっても過言ではないと思います。
大規模修繕でも経験が豊富で優秀な人が味方に付けば、役員の方の負担と責任はかなり緩和されると思います。工事全般のすべての手順を示し、管理組合として意思決定しなければならない事項とタイミングなどの理解です。そして工事の内容と予算金額の調整、更には施工業者選定と施工品質の審査。工事に付帯する仮の駐車場の確保など、すべての道筋の案内をやってくれるはずです。
ここで味方の見つけ方が問われます。先ず会社を基準に選ぶのか人を基準に選ぶかです。よくあるのが企業イメージとかブランドです。私たちの経験では、大規模修繕に限らず大概のことは会社ではなく人の能力で行うものです。だから担当する人の力量を図ることが先決でしょう。他方、所属する会社の社会に向けての姿勢にも目を向ける必要もあります。
更には味方に委託する金額が高いか安いかです。この高い安いは誰でもわかる基準です。ここで大切なのは、人の能力を活用して管理組合の負担を減らしながら、より高品質の大規模修繕工事を実現させるためには、何が必要で、どんなことに気を付けなければならないかがお分かりいただけると思います。「委託金額が比較して安いから、安い方に決めます」、このような安易な考えでは、本当に失敗しない大規模修繕を望んでいるのかどうかが疑われます。安いのは安いなりの何かがあるのではないか?このような視点で考えることも必要でしょう。
やはり明確な選定基準に沿って、「この人だったら任せて大丈夫」だと選定経過と理由を、管理組合(区分所有者)に対し明確に説明できる能力が役員の方にも問われているのでしょう。任された人は当然のこと、任した発注者責任もしっかり自覚しなければならないのです。
大規模修繕工事の成否は、優れた味方の選定にかかっています。ここを間違うとマンション内のコミュニティさえも壊れてしまう危険をはらんでいます。