大規模修繕の時期
マンションの管理組合役員の方からよく出てくる質問に、「大規模修繕の時期はいつが適当なのだろうか」です。
結論から言いますと、「大規模修繕の時期は建物の劣化状態を正しく把握して決めるものである」というのが正しい答えでしょう。劣化状態を正しく把握するためには、正しい劣化調査と合理的な判断が必要となります。この際の調査は外見上の劣化を調べることで十分です。
このように調査を行って判断すればよいのだが、ここで難しいテーマがある場合があります。それは外壁タイルの浮きを伴う剥落の危険性の問題です。屋上防水などは足場を架設しなくてもある程度の補修で劣化を防止することができます。だから大規模修繕工事とは切り離して屋上防水の修繕工事を行うことは珍しくありません。
外壁が汚れている。シーリング材が劣化している。鉄部の塗装が劣化している。大概これらの劣化はまだ致命的な損傷を与えるレベルに至っていないのが一般的なように感じます。
ところがタイルの剥落の危険性は看過できません。したがって足場を架設すれば大がかりな出費が伴います。そこで考えたのが、多少費用が掛かっても外壁タイルの浮き状態をより詳細に把握する目的で、ブランコ調査を行い(階数にも限界はある)、調査の結果、浮きの程度が少ない場合の修繕工事は簡易なゴンドラを使用し高所作業を行うことがベターな選択ではないだろうかと思います。工法としては特殊なピンで固定します。このような考え方は、大規模修繕工事に要する修繕積立金の不足を考慮した場合です。
仮に浮きの程度が方範囲にわたっている場合は、仮設足場を組み立てた大規模修繕工事を行うべきでしょう。当然十分な費用が確保されていれば、ベストの選択としてすべての部位についての大規模修繕が望ましいのは言うまでもありません。
大規模修繕工事の実施時期について、工事関係者は早急に実施すべきだと主張する場合がありますが、すべてのマンションで修繕積立金の残高が十分であると言えない状況であれば、なおさら現実対応したより良い選択しかないのが実情です。
大規模修繕の時期などについては、工事に携わらない人、管理組合の立場に立てる専門家(マンションに詳しい一級建築士など)に相談されることをお勧めします。
更に検討すべきは、調査の結果を理事会と総会に諮り、役員の変更があっても調査結果に添った大規模修繕工事の計画を維持すべきでしょう。そして修繕委員会の活動も継続して行うべきでしょう。