マンションの杭打ち工事データ偽装事件
横浜のマンションの基礎杭の打ち込みデータの偽装事件が発覚した。建築業界の信頼を根底から揺るがす大事件に発展している。旭化成建材一社の問題だけではなく、業界全体の体質的な問題に発展しかねない事態となっている。
報道によると杭工事を施工した旭化成建材が大々的にクローズアップされているが、マンションの販売会社ならびに工事をした元請会社にはどのような責任があるのかはあまり表面化していないのが不思議である。
建築工事には前段階の書類審査があり、設計図書ならびに関連する書類審査で許可を得、工事が始まると設計通り(許可審査の図書通り)現場ではチェックするのが監理者である。ところが設計者・監理者は元請工事会社内のスタッフであるがために、第三者的な立場でチェックできない仕組みとなっている。
報道などでは、データの改ざん原因は。「現場での杭の長さなどの変更を行うと工期が間に合わない」といった点が協調されているが、もちろんそのことも一つの要因であろうが、旭化成建材は自らのお客様は直接契約している会社であり、そのもっと先にある消費者が本来のお客様であるといった視点が欠けていたように思われる。
ここは建築生産における品質確保の点から、監理者チェックをどのようにして機能させるかを真剣に考えなければ再度同様な事件が生ずる可能性がある。アメリカのようなインスペクター制度を導入すれば根本的な問題は解消されると思われるが、そのためには施工現場できちんと監理できる建築士など専門家の資質や能力がポイントとなる。
業界のとある人がくしくも言ったことがある。「設計施工は泥棒に金庫番」
建築生産の過程で建て主や施工業者から完全に独立したシステムを導入できるのはまだまだ先の話かもしれない。