業界の常識?世間の非常識?(その一)
Q:工事中の業者が信用できなくなったのでどうしたらよいか?
ある年の晩秋でした。見ず知らずの人から電話がありました。「賃貸マンションを建てているのだが、工事が1ヶ月ほど停まっている」。
そこで理由をお尋ねすると、「工事業者が信用できなくなった」とのことでした。そこで先方の要求を聞くと、「専門家が中に入ってきちんと工事を完成させて欲しい」とのことでした。
その後、見ず知らずの人(後の依頼建築主)の話を詳しく聞き、私との間で契約を行い、併せて工事業者に契約に関する事を同意してもらい、いざ現場へと乗り込んでみました。
まず最初にしたことは、確認申請書類・現場で使用している図書・工事請負契約書などの整合チェックです。
ここからがとんでもないことが始まりました。
まず、確認許可書の図面と工事を行なうための図面の中身が合致しないのです。その中に基礎杭の本数はもとより工法や種別も異なるのです。
もちろんこのことは依頼建築主に伝えました。本人にとれば相当のショックです。
建物は4階建の3階まで建ちあがっているのだから、この後どうするか。
当然工事業者にも何故設計と現場が変わったのかを問い詰めています。業者さんの言い分は、「2億で任されているのだから2億で完成させればよい」の一点張り。契約書もA-3版一枚(当然金額のことしか書いていない)
そこで私は「分かった、2億でよろしい。ただし、外壁のタイルは嫌いだから“金貼り”にしてくれ」と言いました。理由は、決まっているのは2億だと工事業者が言い張るのだから仕方がない。
もちろん工事業者は“金貼り”など了承しません。
押し問答の後、ここで契約書を再度作り直して再開しようと提案。
これに工事業者は同意しないわけには行かない。理由は工事が延びると儲けにならないからです。本当は延期すれば依頼建築主にも損害が発生するのだが。
契約書には事細かく文書化し、当然基礎杭変更に伴う確認申請の再提出が含まれ、基礎杭の変更もありました。
基礎杭の件は継続協議としてその場はぼかしました。理由はその時点で争うと工事は完全にストップする心配からです。
そうこうしている内3月初旬に工事完成。
正月休みに依頼建築主に、「私の検査と支払了解がないと工事業者に一切支払をしてはなりません」と釘をさしておきました。工事業者が支払いその他で泣きを入れても私の了解がないと一円も支払ができないようにしたのです。
さて最後のヤマ場です。
清算の話(基礎杭の減額の話です)
当然私も別の杭打ち業者から見積書を取寄せていました。当然のごとく工事業者とこちらが提示した額との開きはあります。
この話で押し問答を繰り返していると、急に工事業者の偉い一人が大きな声で怒鳴りだしました。
それはそうでしょう。数百万円の減額の話ですから。
私は「そんな大きな声を出さなくてもも良く聞こえるから静かに話してくれ」と言いました。続けて「不満だったら日を改めて話し合いをしよう。1年でも2年でも構いませんよ」と提案したのです。
これには工事業者君も観念し、「いくらで了承したら」と静かになりました。
私からの提案は「どちらも正しい金額だから、そのことを尊重して、足して2で割るで行きましょう」。
これで一件落着となり、後に依頼建築主に支払額をお伝えし、幕となりました。
帰り際に工事業者の残した言葉。「良い勉強になりました」でした。
高い勉強代だが、お客様を素人だと思っていい加減なことが数百万円の結果でした。
こんなことだったら数百万円の半分でも貰う約束を依頼建築主としておけばよかったなぁ。残念だが今後の私の勉強とすることにしました。