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リフォームで優先して行なうところはどこ?

3年ほど前に私の親戚からリフォームの相談が来ました。その中身は応接室を拡張し、寝室にしたいというものでした。このお家は私が40年ほど前に設計したもので、今の時代から比較すると性能的にも劣る住宅でした。もちろんこれまでにも台所の拡張などのリフォームは行なってきていました。それから立地は岡山市南区です。 

相談の電話の後、現場の確認とヒアリングです。拡張の目的と使い方などの確認を行ないます。当然費用をどの程度投下するのかも大切な確認です。ここまでなら普通の設計者が行なわなければならない基本的なことですが、私は尋ねました。「冬寒いところはありませんか」。それに対する答えは、押入れの床下からの風が入って和室が寒い。廊下が寒い。トイレが寒い。 

このお宅には高齢者のご両親と同居している家庭です。私は常々家庭内事故に関心を持っていて、特に冬季における高齢者のヒートショックで多くの方が亡くなっている事に着目していました。実はヒートショックを原因とした死亡例は全国で3000人と言われています。 

だから折角リフォームをするのだから、この点の緩和策の提案は当然行なうべきと思っていました。 

相談主はこれらの寒さ対策はどのようにしたら解消できるのかを私に尋ねてきました。それに対し、可能なこととして廊下の床暖防と浴室・脱衣の暖房乾燥機の設置を提案しました。こんな話をしていたら、相談者から「主要な部分のサッシの交換と拡張する部屋の床暖房を検討してくれ」ということでリフォーム工事の設計を進める事となりました。 

それらの経過の中で、トイレの暖房機が適しているものがないのでペンディングのままで工事を完成させました。 

さて工事が完成し、寒さ厳しい冬が過ぎ、暖かい春が来た時点で相談者にリフォームによる性能向上について聞いてみました。 

彼の話で想定していなかったことも分かりました。まず、①家全体が暖かくなったこと。(これは当然、隙間が少なくなったのだから)、②あれほど悩んだトイレの寒さがなかったこと。(理由として熱は高い方から低い方に流れる、廊下の暖気がトイレに流れた結果)、③奥様が大変喜んだ。(洗濯物の乾燥の気苦労がなくなった、冬季大家族の洗濯物が大変だったそうです)、④お年寄りが寒いトイレ・脱衣・浴室で倒れるリスクがなくなったのと、何より入浴時が快適。 

このケースのリフォームで感じた意外なこととは、暖気と湿気は高いところから低いところに流れる。(当然の原理)そして主婦の負担となる洗濯家事の軽減が出来ることでした。 

私が考える住まいづくりの優先は、ヒートショックなどの家庭内事故のリスク低減。もちろん高齢者のお宅ですと段差解消を含むバリアフリー。介護が必要となった際の介護を受ける側とともに、介護を行なう側にとっても負担軽減をどのようにするか。 

このように考えてゆくと、優先順位といった点では、見掛けも大事だが性能と機能のグレードアップを考えることの方が優先させる必要があるのではないだろうかと思います。 

今回の件でも、ヒートショックのリスクを低減させるための暖房乾燥機の取り付け費用は十数万円でした。仮に事故が起きた後の家族の負担を考えると費用対効果は抜群だと思います。 

この工事とは別に、台所の改造の相談を受けたお宅がありましたが、脱衣・浴室の寒さ対策として浴室暖房乾燥機を取り付けることを勧めました。

このお宅にもご高齢のお母様と同居の家庭だったからです。 

タイル張りのお風呂は寒い。改善は浴室暖房機を取り付けるか、ユニットバスを検討して下さい。最近のユニットバスには暖房乾燥機の装備は標準的。

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