契約とお付き合いの違い
Q:管理会社の対応がしっかりしないのだがどうすれば良いのか?
マンションの管理会社と管理組合の関係を傍らから見ていると、しっかりしている管理組合ほど管理会社は「管理委託契約書」に忠実に業務を行なっているように見えます。
“管理会社”、何時ごろ誰が言い出したのかは分かりませんが、管理会社について国土交通省の表現は“管理業者”となっています。“管理会社”であろうが“管理業者”であろうが言葉の表現は別として、多くのマンションは自主管理ではなく管理の大半を管理業者に委託しています。
ところが管理組合と管理業者の間で本当に信頼関係が維持されているのか否かを見ていると、50%くらいの管理組合は管理会社の変更を検討しているといった残念な声を聞きます。また実際に管理業者の変更を一度ならず、数度も行なっている管理組合も珍しくなくなってきました。
マンションの管理業務はそれほど多く儲かるビジネスではなくとも、安定した収益を期待できる魅力的な事業だと思うのですが、長期の絆を維持できないことは双方にとっても残念なことだと思います。
では何故このような事になるのかを考えてみると、まず双方の初期の関係にひとつの要因があるように思われます。新築分譲・購入時に管理業者が特定されていることが上げられます。管理業者の立場から言えばお客様は誰?ではないでしょうか。初期に指定されたデベロッパー?それとも管理委託を受けた管理組合?どちらを向いて業務サービスをすればよいのでしょうか。
例えば建築物に瑕疵が顕かになった場合、管理組合から指摘を受けた際に正面切ってデベロッパーに申入れが出来るのかといったことも想定されます。このような瑕疵について多くの管理組合は、工事を施工した建設会社に対し直接協議を行ったりしますが、正しい交渉相手は不動産取引を行なったデベロッパーと言うことになります。
因みにデベロッパーは、用地と建築物を仕入れ小売を行なうビジネスモデルです。建物が完成し、引き渡す時には、購入者に代わって竣工検査を行なう義務があると思います。法的にも「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅の品確法)」の適用を受けますので、義務の有無に関わらず建築主の社会的努めだろうと思います。
これらの仕組みを考えると、瑕疵に関しては委託契約の中では明確に管理組合側に立って支援するようには明記されていないはずですし、管理業者も系列デベロッパーであっても積極的な対応行動を起こすことはありません。理由は管理業者にとってのお客様が管理組合以外にもあるからです。このことによって、管理組合から見ると頼りになる存在か否かの点で信頼関係にまで発展してゆきます。
次に管理組合と管理業者の信頼関係が破綻する要因として、日常の管理に対する不満。会計報告が遅い。中身が間違っている。委託費に対して業務の質が劣る。依頼したことに対し了解したにもかかわらず対応が遅い、もしくは対応しない。などなどです。
これらの日常的な不満に改善が見られないうえに、委託業務に定められていないことに口を挟む。
そして不適切な設備などを管理組合に奨める。修繕工事に業者推薦を行う。
これらのことが本当に有益であれば管理組合から感謝されるのだろうが、逆の事態になるとそれまでの不満が頂点に達し、管理業者変更にまで到るのです。
折角初期の縁を頂いたのに、企業としてどのように考えているのか不思議でなりません。
ここまで一方的に管理業者のことを述べてきましたが、客観的な立場から見ると、管理業者のペースとなるのは、管理組合側にも大きな責があるといっても差し支えないかもしれません。
でも、管理組合が専門性の高い分野について無知だから、といって “主客転倒”のような事態になることは好ましくないと思います。
以前確か、マンション管理センターの方がセミナーで、「管理委託契約書にないことを管理業者が言い出したら気を付けて下さい」と言われたことがありました。
なぜ国土交通省が幾度となく「マンション管理の適正化法」や「標準管理委託契約書・標準管理規約」などの更改を行なわなければならないのか、このことを考えてみると、マンションに関する事が未だ未整備であることと、管理業界における一部の業者の体質が問題視されていると言われてもやむをえない状況です。
「自分たちのマンションは自分たちで守る」。このことは法的にも規約上でも明記されているはずですが、それを熟読して適性に運営することが管理業者のペースから、自立した管理組合であればある程自分達のマンションの魅力に磨きがかかるのです。
管理組合にとって、管理業者依存症からの脱却こそがスタートラインです。スタートを切ることによって、「マンションを良くしよう」へと発展し、この関係こそ双方にとってすばらしい絆を共有できるのではないのでしょうか。
お付き合いではなく良好な契約関係には、必ず内在されている緊張感が必要です。スタートを切ることによって、管理業者と適切な緊張関係が育まれ、そのことによって「マンションをもっと良くしよう」へと発展するのではと思います。
この関係こそ双方にとってすばらしい絆を共有でき、マンションがある限りのお付き合いが出来るのではないのかなと思います。
「親しき仲にも礼儀あり」