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こんな事があったよ(その二)

Q:お風呂の修繕を業者に頼んだが断りたい。どうしたらいいのか? 

以前から顔見知りだったおばあちゃんにある会合でお目にかかりました。その人はとても可愛いお年寄りで奥ゆかしい方でした。ところが当日は何か元気がないのです。そこで私から話しかけて様子を伺いました。 

おばあちゃんが言うのには、業者の人が来て台所などの「水漏れ調査をしてあげる」と言って来たので、じゃあと言うことで見てもらったそうです。しばらくして「ユニットバスの壁に隙間があるので、このままにしていると水漏れを起こして大変なことになる」と言われ、おばあちゃんはその業者の提示した工事注文書にサインとハンコを押してしまったそうです。その後おばあちゃんはお金の工面をしなければと考え、思案に暮れているということが想像できました。

その後私もおばあちゃんのことは気になっていたのですが、目の前の仕事のことと、自分からおせっかいをして良いものかどうか少々モヤモヤした気持ちで一ヶ月ほど時間が経過してゆきました。 

午後7時過ぎた頃、ふっとおばあちゃんのことを思い出しました。「その後どうなったのだろう」。 

早速電話。おばあちゃんが電話口に出てくれました。「その後どうなったの?」。 

おばあちゃん曰く、「これから業者の人が来るの、どうしよう」。この一言で困惑していることはすぐ理解できました。 

そこで私は、「業者が来たら電話してください」と伝えて電話を切りました。 

一時間ほど経過した頃おばあちゃんからの電話が鳴りました。私はおばあちゃんに、業者に電話を変わってもらうように伝えすぐ業者との話となりました。 

先方の話は、「もう注文書を切ったのだから解約はできない」。 

「本人が嫌がっているものを中止するわけには出来ないのか」。当然のごとく意見の衝突です。 

じゃあお会いして直接話をしましょう。と言うことでおばあちゃんのお宅に出向いてゆきました。この時点で業者は私が建築の専門家であることを知りませんし、知る必要もないこともある程度想定できていました。 

さておばあちゃんのお家に着くと、茶髪の若い人物が二人構えていました。私も席に着くと先程の電話の続き話です。この場面では手書きのカーボン写しの注文書を示して、クーリングオフの日にちも過ぎているのだから工事中止は出来ない。 

彼らの態度は明らかに普通のビジネスマンではないことは誰でも分かる雰囲気です。私との押し問答を繰り返している中で、「もう材料は出来ているので工事の中止は出来ない」とまで言い出しました。 

この言葉は好都合。「じゃあこれからその材料を確認に行こう」と私が言い出すと。「今は9時過ぎだから今日は無理」と茶髪の業者君が言いました。間髪を入れず「それでは明朝にしよう。場所はどこですか?」とたたみかけて問うと、茶髪の業者君は豹変。というより本性を現したのです。想像通り大声で言葉を荒らす。 

「お前は何のために口出しをするんなら」。(ギブアップの分かりやすいサインです)

 「おばあちゃんが困っているのを知らん顔も出来ない」。「大きな声を出さなくてもよーく聞こえるから静かに話してくれ」とも言いました。 

もうここまで来ると先方さんはここで関わっていても時間の無駄と判断したのでしょう。「今回は特別にクーリングオフを認めてやろう」といった捨て台詞に変わりました。この頃になると元の静かな話口調です。時間は夜の9時を回っていました。お年寄りの一人暮しのお家に夜間押しかけるとはこれも非常識。 

彼らが退散した後、おばあちゃんに「明朝内容証明郵便で解約の通知文を作るから事務所に来て下さい」と伝えて帰社となったのです。 

翌日通知文の準備を終えた頃、午後と言っていたのにおばあちゃんは事務所に現れたのです。 

少しでもこの件から離れたいといった気持ちの表れだったのかもしれません。私は通知文の差し出し方を教え、その後おばあちゃんは郵便局に直行したのです。 

一週間ほど経過して、通知先の会社から解約同意の通知はがきが届き一件落着となりました。 

長く建築設計の仕事に携わってきましたが、訪問販売業者と出くわした経験は後にも先にも初めてでした。 

知らない業者から電話や訪問があったら、きっぱりと断って下さい。もちろん家に上げてはいけません。 

一呼吸おいて、家族や知人あるいは信頼できる専門家のアドバイスを活かすことです。このような相談に対し私は費用を頂きません。可愛いおばあちゃんのほっとした顔とにっこりした笑顔で十分です。

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