マンションなどの大規模修繕工事に際し、設備の事を論じる人は多くありません。
建築はしっかりしていても、設備に不具合が発生すれば直ちに生活に支障が起きます。電気はもちろん水道や排水関係の設備と配管類です。
私たちは大規模修繕工事にあたり、建物の劣化とその原因、そして修繕方法を考慮しながら調査を行います。そして建物に付帯している様々な設備にも目配せを行います。
その中で給排水管については、管の材質をまず確認し、水道管などは各戸の水道メーター以降の部分を抜き取ります。そして抜き取った水道管を輪切りにして目視できる状態とします。
この水道管の抜き取り調査は、将来再びサンプリングした水道管との対比で、時間経過でどの程度劣化が進行しているのかを判断できる材料となります。当然配管の取替え工法か延命工法かを判断する手掛かりにもなります。
仮に取替え工法が必要となった場合、一定程度の年数を要して十分な検証のもとに取り掛かるべきです。
「私の家は昨年リフォームしたばかりなのにまた壁の撤去をしなければならないのか」といったようなことも想定されるからです。
給排水管の取替え工事は共用部だけに留まりません。専有部にまで影響が及ぶからです。
このように考えると大規模修繕工事では、屋上防水や外壁塗装の工事は中学生レベルだとすれば、給排水管の取替工事ともなると大学生レベルくらいの例えが想像できるでしょう。
もちろん取替工事を判断するには、日常の保守を行っている業者さんの意見も参考として重要となります。
抜き取り下給水管
横浜のマンションの基礎杭の打ち込みデータの偽装事件が発覚した。建築業界の信頼を根底から揺るがす大事件に発展している。旭化成建材一社の問題だけではなく、業界全体の体質的な問題に発展しかねない事態となっている。
報道によると杭工事を施工した旭化成建材が大々的にクローズアップされているが、マンションの販売会社ならびに工事をした元請会社にはどのような責任があるのかはあまり表面化していないのが不思議である。
建築工事には前段階の書類審査があり、設計図書ならびに関連する書類審査で許可を得、工事が始まると設計通り(許可審査の図書通り)現場ではチェックするのが監理者である。ところが設計者・監理者は元請工事会社内のスタッフであるがために、第三者的な立場でチェックできない仕組みとなっている。
報道などでは、データの改ざん原因は。「現場での杭の長さなどの変更を行うと工期が間に合わない」といった点が協調されているが、もちろんそのことも一つの要因であろうが、旭化成建材は自らのお客様は直接契約している会社であり、そのもっと先にある消費者が本来のお客様であるといった視点が欠けていたように思われる。
ここは建築生産における品質確保の点から、監理者チェックをどのようにして機能させるかを真剣に考えなければ再度同様な事件が生ずる可能性がある。アメリカのようなインスペクター制度を導入すれば根本的な問題は解消されると思われるが、そのためには施工現場できちんと監理できる建築士など専門家の資質や能力がポイントとなる。
業界のとある人がくしくも言ったことがある。「設計施工は泥棒に金庫番」
建築生産の過程で建て主や施工業者から完全に独立したシステムを導入できるのはまだまだ先の話かもしれない。