Q:屋根の不具合の修繕依頼をしても施工した工務店が対応してくれない。
(事の始まり)
仕事関係の知人が電話してきました。「先日屋根に上がったところ、棟材が割れているので工事をした工務店に話をしてもラチが明かない。そこでメーカーと掛け合っているが返答がなくて困っている」との事でした。
例のごとく、早速現場へ向かい確認作業となりました。屋根材はカラーベストだが、相当の年数は経過しているものの一般部は問題なし。ただし知人の言ったとおり棟材などの“役物”の釘打ち部分が割れたり変形したりしていました。
この事実をもとに、材料メーかーに私が出向き事の訳を説明した上で、現場の確認を行い、そのレポートを提出してもらうことにしました。
(設計者がスイッチを入れると先方が回転しだす)
その後メーカーから釘の締め付けによる割れと結論付けたレポートが出てきました。つまり不具合の原因は経年劣化ではなく、当初の工事の粗雑さが原因であるということを報告してきたわけです。
さてこのレポートを基本と位置づけて、当初の工事を行なった工務店との協議を進める事となったわけです。この時点では知人と工務店とメーカーの三者交渉として頂き、私は知人のサポート役に徹することとしました。
当然この時点で、私のような専門家がアドバイザーとして関与していることは工務店も分かってきたと思います。
今度は工務店も事の無視とは行かず、屋根の調査を実施しました。この時点では既にメーカーのレポートを手元に持っているるのだから、工務店が単純に事の非を否定することはできなくなっていました。後は修繕の費用を知人ではなく、工務店が負担しなければならない事を認識してもらうかです。
(ここでまたひとつ不思議なことが判明しました)
知人宅で当事の注文書と屋根材のカタログを見比べていると、実際に屋根に使われている材料と注文書の材料が異なるのです。
知人にこのことを話すと、「なんで?でも今の材料が気に入っているんだけど」という反応です。ただし材料単価はどちらも同額でした。
そこで知人にどこで間違った材料になったのか工務店に説明してもらうようにアドバイスを行ないました。
工務店の明快な返答はなかったがただ誤るのみです。疑えばきりがないのですが、材料がすぐ間に合わなかった?在庫があった?意図的に変更した?
もし今からでも注文書の材料と異なるのだから、屋根全部を注文書どおりの材料で葺き替えて貰うことも可能だったのです。
(屋根材が無償で新品になるメリットは大きい?)
このようなこともあって、屋根の件はきれいに修繕がすみ、知人の費用負担もなく一件落着となりました。
しかしこの件でおどろく事は注文書のことだけではありませんでした。本当は知人の立場を考えると書けないのですが、ここは勘弁。
知人の家は築後30年以上経っている平屋の建物です。(だから素人でも屋根に上がれた)
屋根工事をしたのは地元のリフォーム工務店でした。屋根工事の注文書に混じって耐震補強工事の注文書も目にとまりました。
専門家から見ますと、まず普通の建方をしていれば地震や風にに対しそんなに心配する必要はないのですが、工務店から知人は家の耐震補強が必要と言われて、天井裏や床下に玩具のような金具がむやみやたらにビスで取り付けられているのです。当然それを見た私はびっくりしました。「なんじゃこりゃ」。
長く設計の仕事をしていても、自分の経験や想定外の物を見ると誰でもそうだろうと思います。アンビリバボー!
この工務店の現場での所業も知人から聞かされて、またびっくり。
工事に要する水を他人様の水道を無断使用。車は勝手に人様の土地に駐車。塗料が飛散するのに適切な養生もしない。心配した知人が気を利かせて行なった。
これらのことを聞かされて唖然。れっきとした工務店が人の物を無断使用でビジネスをする。本当の話?これでは工事を業とする資格は全くありません。
ウソのような本当の話でした。
素人のサポートにプロが付く事は、転ばぬ先の杖として必要と思います。小さなことでもご相談ください。一言のアドバイスが“転ばぬ先の杖”となる場合があります。
Q:屋上の雨漏りがひどいのだが、工事をしたゼネコンが本気で対応してくれない。
とある築後5年ほどの高級マンションの理事長から電話がありました。
入居後雨漏りがあって、「工事会社に言ってもきちんと対応してくれない。」「どうしたらいいのか分からない」という内容でした。
そこで私は「とりあえず屋上の様子を見させてください」と言って後日確認に行きました。
屋上防水の状態は、一目でわかるいい加減な工事。防水層の下地がガタガタ。釘は飛び出している。排水口の周りの粗雑な工事。
元請工事会社は一部上場のゼネコン。販売も有名不動産会社。しかし実際の工事は丸投げ工事でした。
理事長はこの後改善させるにはどうしたら良いのかアドバイスを求めてきました。
理事長に対し私は、以下の三項目を伝えました。
①管理組合全体が一致団結すること。特に理事会役員が同じ意思を共有すること。②交渉相手は工事を請負ったゼネコンではなく、取引をした不動産会社である。
③言葉ではなく文書での確認作業が必要である。
ここからが大変。時間がかかりました。
不動産会社との協議です。当然工事を請負ったゼネコンスタッフも同席です。
まず、屋上防水の不具合を認めさせるのに数ヶ月。防水保証書の効力を認めさせるのに多少の日数。
販売責任を認めさせる。(瑕疵物件の販売です)
このことは大変だったが、決定的な決め手がありました。それは販売時のパンフレットでした。
高級パンフレットに、「屋上の水張り試験を行なって防水機能が正常にあることを確認する」旨の記載です。
私は「このパンフレットはこのマンション用のパンフレットで、水張り試験をすると書いてあるが、本当に実施したのか」「行なったのであれば写真の1枚でもあろう」と問い詰めました。
これには不動産会社のスタッフもぶち切れ。「今から水張り試験をやる」。
私は「やめてくれ、雨漏りが発生したら住戸内や家財道具にも損傷が発生する」と言いました。
この頃は文書を通じた戦でした。
このバトルで、ゼネコンスタッフが何人交代したことか。個人的にでも非を認めることはできないから、人が変わらなければ理詰めの交渉に耐えられなかったのかもしれません。
(同類の別の件でも担当者は良く代わりました)
やっとのことで瑕疵を認めたのですが、その後も大変なバトル続きでした。
先方から出てくる補修案をことごとく拒否です。理由は効果のない、費用のかからない補修案ばかりです。おそらく補修費は工事を請負ったゼネコンが負担するのだろうだから、ゼネコンとしても赤伝を取締役会にかけなければいけないのだろうと想像できました。
紆余曲折に3年ほど時間を費やし、法廷闘争の一歩手前まで行ったのですが、最後一千万円近い金額で交渉成立。
ゼネコンを含め不動産会社側の最後の言葉。捨てぜりふ?「2度と言ってくるな」
一担当者であっても、これが名のある一流企業の言葉かと言うのが現実です。
救いは、管理組合役員の意思が固くくじけなかったことです。
(途中幾度となくこの点は注意しながら)(相手の分断作戦がよくあるため)
Q:工事中の業者が信用できなくなったのでどうしたらよいか?
ある年の晩秋でした。見ず知らずの人から電話がありました。「賃貸マンションを建てているのだが、工事が1ヶ月ほど停まっている」。
そこで理由をお尋ねすると、「工事業者が信用できなくなった」とのことでした。そこで先方の要求を聞くと、「専門家が中に入ってきちんと工事を完成させて欲しい」とのことでした。
その後、見ず知らずの人(後の依頼建築主)の話を詳しく聞き、私との間で契約を行い、併せて工事業者に契約に関する事を同意してもらい、いざ現場へと乗り込んでみました。
まず最初にしたことは、確認申請書類・現場で使用している図書・工事請負契約書などの整合チェックです。
ここからがとんでもないことが始まりました。
まず、確認許可書の図面と工事を行なうための図面の中身が合致しないのです。その中に基礎杭の本数はもとより工法や種別も異なるのです。
もちろんこのことは依頼建築主に伝えました。本人にとれば相当のショックです。
建物は4階建の3階まで建ちあがっているのだから、この後どうするか。
当然工事業者にも何故設計と現場が変わったのかを問い詰めています。業者さんの言い分は、「2億で任されているのだから2億で完成させればよい」の一点張り。契約書もA-3版一枚(当然金額のことしか書いていない)
そこで私は「分かった、2億でよろしい。ただし、外壁のタイルは嫌いだから“金貼り”にしてくれ」と言いました。理由は、決まっているのは2億だと工事業者が言い張るのだから仕方がない。
もちろん工事業者は“金貼り”など了承しません。
押し問答の後、ここで契約書を再度作り直して再開しようと提案。
これに工事業者は同意しないわけには行かない。理由は工事が延びると儲けにならないからです。本当は延期すれば依頼建築主にも損害が発生するのだが。
契約書には事細かく文書化し、当然基礎杭変更に伴う確認申請の再提出が含まれ、基礎杭の変更もありました。
基礎杭の件は継続協議としてその場はぼかしました。理由はその時点で争うと工事は完全にストップする心配からです。
そうこうしている内3月初旬に工事完成。
正月休みに依頼建築主に、「私の検査と支払了解がないと工事業者に一切支払をしてはなりません」と釘をさしておきました。工事業者が支払いその他で泣きを入れても私の了解がないと一円も支払ができないようにしたのです。
さて最後のヤマ場です。
清算の話(基礎杭の減額の話です)
当然私も別の杭打ち業者から見積書を取寄せていました。当然のごとく工事業者とこちらが提示した額との開きはあります。
この話で押し問答を繰り返していると、急に工事業者の偉い一人が大きな声で怒鳴りだしました。
それはそうでしょう。数百万円の減額の話ですから。
私は「そんな大きな声を出さなくてもも良く聞こえるから静かに話してくれ」と言いました。続けて「不満だったら日を改めて話し合いをしよう。1年でも2年でも構いませんよ」と提案したのです。
これには工事業者君も観念し、「いくらで了承したら」と静かになりました。
私からの提案は「どちらも正しい金額だから、そのことを尊重して、足して2で割るで行きましょう」。
これで一件落着となり、後に依頼建築主に支払額をお伝えし、幕となりました。
帰り際に工事業者の残した言葉。「良い勉強になりました」でした。
高い勉強代だが、お客様を素人だと思っていい加減なことが数百万円の結果でした。
こんなことだったら数百万円の半分でも貰う約束を依頼建築主としておけばよかったなぁ。残念だが今後の私の勉強とすることにしました。
Q:夏涼しく冬暖かい家はできないのか?
A:兼好法師は徒然草で、「住まいは夏を旨とすべし」と書いています。確かに日本の気候は亜熱帯地域であり、世界有数の高温多湿地域です。
南国の住まいを見れば分かる通り、高温多湿地帯では風通しが良い住まいでなければ不快でたまりません。
「住まいは夏を旨とすべし」と書かれてはいるが、それでは冬の住まいはどうすれば良いのかとは書かれていません。おそらく当時の建築技術では冬対策が出来なかったのだろうと思われます。
昔から比べると住宅建材は大きく進歩しました。屋根材・外壁材・窓枠材などです。最近やっと機能から性能面に開発の視点が変化してきましたが、これは地球環境や省エネなどの社会的要求に沿った開発が進んだからでしょう。
人が快適と感じる環境は個人差があります。温度は18度~24度・湿度は40%~60%だとすれば、それ以上ないしそれ以下だったらエアコンやファンヒーターで強制的に適温レベルにすれば良いというのがこれまでの考えではないのでしょうか。
本来住宅に求める事は、その性能と機構によって、冷暖房機器に頼らなくても快適環境が維持できれば良いはずです。これまでのビルダーは見かけにこだわり性能面がおろそかだったような気もします。もちろん消費者側の要求にも一端があったことも事実でしょう。
建材の進歩は住宅の気密性能を高めました。気密が高ければ冬の温度維持はできるが、換気設備が不十分な住まいでは冬でもカビと結露が発生します。一方夏季では熱がこもりがちで、こもった熱は夜間でも放熱するためにエアコンは欠かせません。
原理原則をもう少し考えてみると、冬期の昼間は太陽熱を取り入れ夜間には逃さない。夏季は太陽熱を遮り熱を貯めなく夜間は放熱させる。
このような経験がありませんか?
真冬でもビニールハウスはあのように薄くても中に入れば温かい。真夏でも家より外のほうが涼しい夜がある。
自然のエネルギーを上手く住まいの中に取り入れる。そのためには住まいを装置として考えれば、おそらく岡山では暖房不要・冷房不要の住まいが可能と考えられます。
この度の大震災でも、地震直後は即停電が発生しました。停電は原発を見るまでもなくすべてのインフラ機器を機能不全にします。もちろん暖房器具は停止したままです。
それでも高断熱高気密の住宅は、あの寒冷地域でも室温は12度より低下しなかったのです。この事実は住まいの性能は住まい手の健康と直結していることを示しています。
人にやさしい環境は結露やカビダニの発生しにくい環境となります。結果的に夏涼しく冬暖かい家は、超省エネ住宅であり、本物の健康住宅となるのです。
本物の健康住宅は人と住まいの長寿命化も同時に促進します。今後このような住宅技術を解き明かしてゆきます。
Q:マンションの管理費や修繕積立金はどのような使われ方をしているのでしょうか?
A:マンションを購入する時に、「管理費」・「修繕積立金」・「管理規約」・「管理委託契約」などについて詳しく理解してから購入する人はほとんどいません。
間取りとか立地、そして借入金のローンのことに関心が行きがちですが、購入後長期間にわたる出費のことをきちんと理解している人は少ないです。
私がマンション勉強会で必ずお伝えしていることは、「管理規約」と「管理委託契約書」の2つを何度も読み返して下さいと伝えています。マンションで暮らすうえで必要な知識の根本的なことはこの2つに集約されているからです。
多くのマンション管理組合の方とお付き合いをさせて頂いたことで気づく点は、少数派ではあるが管理業者に管理を委託せず完全自主管理の管理組合があります。
自主管理の管理組合の方たちは、苦労もありますが自分たちのマンションの財務状況から建物の状態までしっかりと把握しています。それはそうだと思うのは、他人任せではなく自分たちでマンションを良くするための自助努力をたゆまなく実施しているからです。
一番大切なお金の管理(財務管理)を手放して、第三者の管理業者にノーチェックでお任せするなど到底考えられないことです。
マンションのお金に関する横領事件などは日常的に発生しています。これらのことに鑑みて、国土交通相もここ数年の間、管理組合と管理業者向けに「標準管理規約」ならびに「標準委託管理契約書」の改訂を行って来ました。
一方管理業者に対しては、業務の追加的義務化ならびに指導監督の強化も併せて実施しています。
民間部門のマンションの運営について、役所がモデル的な指針を作成しなければならないほどマンション問題は幅広くて深いのだと思います。
マンションの管理組合は、管理業者依存症から脱却して自ら主体的に意思決定が行える様になって頂きたいものです。
建診協では定期的に、管理組合の皆さん向けにセミナーや勉強会を実施しています。これまで多くの管理組合の方が参加され、少しずつではありますが管理組合からの評価も頂けるまでになりました。
セミナーや勉強会のご案内は建診協のホームページでご確認できます。 建診協本部ページ
Q:管理組合の理事長の努めは何ですか?
A:管理組合の理事長さんは、居住者の皆さんを代表してマンションを適切に管理する努めがあります。
管理組合の理事長を何度も経験される人はいません。マンションライフを快適に維持するためには、当然居住者(区分所有者)の皆さんも協力して努めなければなりません。したがってマンション購入者はマンションに入居した時点で強制的に管理組合員となります。
理事長は一年に一回の定時総会で理事が選出されますが、その理事の中から選任されます。その際監事も同時に総会で選任されます。
理事長は総会で認められた事項を、理事会で審議しながら執行してゆきます。このことは一般の団体の理事会や会社の取締役会、広くは国会の手続きと殆ど変わりません。
一方監事は、業務監査と会計監査の権限を与えられています。本来は理事会の運営と会計状況に無関心でおられないはずです。次期の定時総会では監査報告を行うのは監事の務めだからです。
これらのことは、各々のマンションの管理規約に記載されています。
しかし残念なのはこの規約をよく読んでいない人がいるのも事実です。少なくとも委員会の方や役員の方は、事あるごとに規約の確認を行いながら物事を進めるくらいの注意は必要です。
マンションも継続的かつ適切に維持管理を行うことは大変重要なことです。これらのことを実施するためには当然総会で認められた予算を執行しなければ不可能なわけです。
居住者の皆さんから毎月集められた大切な公金を原資に使用するにあたっては、適正な金額と高い品質とのバランスが求められていますので、これらのことを考えると、マンション管理も経営であるといった感覚が必要だろうと思います。
理事長はこのような状況から言えば、会社の社長さんと同様の務めと言えるのかもしれません。理事長さんは上手に周りのスタッフの力を活用して適切な判断を行っていただきたいと思います。同時に理事や監事の役員さんも理事長さんを大いにサポートしてあげてください。