時計や家電などの工業製品だったらブランド力を信じて購入してもいいだろうと思いますが、建設工事の場合は工業製品と異なり人力で作り上げる部分が多く、作り手の側により出来具合が異なります。
「良くテレビの宣伝によく出てくる大企業だから、高品質でアフターサービスも間違いなくやってくれるに違いない」といった認識をお持ちの方は多いと思います。でも実際の現場を経験してきた者にとると、本当にそうかなという事例に事欠きません。
一部の工事業者は“やり逃げ”や、筋の通らない“言い逃れ”をよく言います。逆の立場で考えてみると、継続的に発注してくれるお客は大事にし、スポット的な仕事、しかも二度と受注の可能性のない庶民の仕事に力点は入れられない。これが実態かもしれませんが、本当はこれではダメなのでしょう。残念ながらブランド力をもった工事会社であっても、現実のアフターフォローの対応には満足できないのが実感です。
それでは我々庶民はブランド力を優先するのか、もしくは地域密着の企業を、そして何事も人がやることですから、その人の能力とそれをバックアップする体制を持った企業かがお付き合いをするポイントとなりそうです。
企業も利益を確保しなければ継続的に活動を維持することができなのはわかりますが、適正なサービスと説明責任を果たし、客先からの“納得”を得る活動にも欠けていることに直面することが多くあります。企業ブランドが褪せます。
マンションは自分たち区分所有者のもので、自分たちで守るという意識を持たないと、シロアリのごとく食いつぶされる。
このことは意識の高い区分所有者やマスメディアの記事によく出てくる言葉です。管理会社がマンションを我が物顔で牛耳っている。マンションに暮らすことは管理業者の支配下に置かれることだと感じている居住者の方は多くいるはずです。誰かが真面なことを言えば、阻害される・意見を言ったものが悪者扱いにされる。無知に付け込んで横暴で卑劣な行為をする。例えば怪文書や理事長あての文書の開封などです。
一体管理会社の業務とは何でしょう?とにかく理事会を乗っ取られるとマンションを乗っ取られるに等しいのです。自由闊達な理事会が行われているマンションにはシロアリは住みつきにくいのです。管理会社依存症を治すのは管理組合です。
もう一度管理委託契約書を読み直して、契約事項をきちんと履行しているのか、契約事項以外の行為を行っているのかよく見定める必要があります。
もちろんマンションを良くしようと頑張っている管理会社もあります。
マンションの着工戸数が頭打ちとなり市場の拡大が見込めない今こそ、本来管理組合に対し、きちんとした管理業務サービスを行っている管理会社が勝ち残ってゆくのでしょう。
建築士の資格種別は、一級建築士・二級建築士・木造建築士と別れています。一級建築士は国家資格でそれ以外は都道府県知事資格です。そして資格により建物の規模と構造により設計できる範囲が定められているが、そのなかで一級建築士には無制限と言ってよく、大規模な建築物の設計監理が行える資格です。不特定の人が使用する劇場・百貨店・病院など特殊建築物といわれる分野の設計監理も含まれています。
一級建築士ができる業務の内容は、設計監理に限らず建物が建った後の調査診断・定期報告・耐震診断や耐震補強設計など新築時の仕事に限りません。当然設備を含む建物全般に対しての業務です。
意外に知られていないのが宅地開発、いわゆる土木系の業務です。大規模な宅地開発の設計にも資格が必要となります。都市計画法施工細則では1ヘクタール以上の設計者の資格として、一級建築士の資格を有する者で、宅地開発に関する技術に関して二年以上の実務の経験を有するものと規定があり一級建築士も含まれているのです。
このように一級建築士の活躍の場は広く、何も建築の設計だけに限りません。そのためには広く知識を吸収することに迫られます。建築基準法・消防法・建設業法・都市計画法・宅地造成規制法・森林法・河川法・道路法、挙げればきりがありません。でもこれだけでは不十分です。社会の変化や価値の動向にも敏感でなければなりません。もちろん建設コストにも敏感でなくてはなりません。
建築士も業務領域を自ら限定せず、業務の幅を広げてゆけば社会に役立てる場面は限りなくあると思います。
小生も大規模な宅地開発の設計の経験があり、現在も進行中のプロジェクトがあります。宅地開発の多くは建物を建設するために行うものだから、一級建築士が事業主の窓口として業務指揮することが合理的だと思われる。
昔から「お役所仕事」という言葉があります。
これは仕事に心が伴っていなく、おざなりの仕事のことを指して、決して良いイメージではありません。これも法の番人としての仕事ですからやむを得ないことかもしれません。つまり役所というところは法律や条例などに従って意思判断を行い、担当者個人の見解での判断や指導ができないといった大原則があるからです。当然お役所は間違いを犯してもいけないのだからです。
お役所からの仕事はどうしても手続き重視に片寄りがちで、一方民間発注の仕事は結果を第一として求める。このことに大きな違いがあるように思えます。
私たちの仕事で、設計監理者としての立場を貫こうとしても、工事請負業者の選択権は発注者である行政側にあり、受注者側に能力の低い現場担当者ならびに工事会社の社風の影響により大きな労力の差が出てきます。
マンションや民間企業であれば設計監理者の意見も反映させながら、発注者としての責任により状況に応じた工事業者の選定となるのです。当然のことながらひとつのプロジェクトを遂行させるためには、それぞれの役割と責任で、立場を超えて協力し合って完成させることが求められるのは当然のことです。
公共工事の原資は、国民・市民の血税で賄われているのだから、公平公正の原則を貫いた執行が求められるのは当然だが、能力不足や不適格と思われる業者への対応に疑問が残る。しかしこの辺りの選別はかなり困難と思われる。
今年は自然災害が多く発生しました。
広島豪雨災害、御岳山噴火など自然の驚異をまざまざと思い返させてくれました。
台風は先週の18号に続き、今週も19号が週末にやってきました。19号は先週の18号と似たようなコースを辿って日本列島を縦断中です。
台風19号と言えば、20年ほど前に岡山でも多くの住宅の屋根瓦が吹き飛ばされる災害が発生しました。
台風が来れば、建築現場では風による物資の飛散や突風による落下などの注意を払わなければなりません。もちろん作業は中止です。昨日見かけた四国の工事現場の足場のシートは少なくとも上の方は折りたたんで支柱にくくりつけていました。当然大型台風の風による足場の倒壊を防止するためです。
このように災害が発生することを予見して様々なことにも気配りが必要で、現場を預かる人は工事を工期内に完成させることと、発注者サイドへの対応、品質の管理、そしてこの度のような台風に対する事前対応など苦労が絶えないと思います。
一度台風が来ると足場シートの折り畳みと再度貼り直す手間など数万円単位の費用が掛かります。これも元請工事会社の負担となりますから、今年のように度々台風に見舞われると大きな費用負担を要することとなるのです。
全ての工事現現場の責任者や関係者は夜を徹して待機しているはずです。このようなことを考えると現場関係の方々に頭が下がる思いです。
平成13年から13年間にわたりマンションン対象の業務を続けてきたが、2・3年位前から管理組合の方からの問い合わせが増えてきました。
問合せの内容は管理会社に対する不信、管理組合役員への不満、無関心、大規模修繕への対応方法などです。特に大規模修繕に関する件が最近増えました。その背景には地方都市のマンションも大規模修繕工事が間近に控えているためでしょう。
大規模修繕に関するお問合せの具体的な例として、管理会社主導で進みかけたのだが、管理組合の方が、途中で「このままでは?」との気づきから建診協の電話が鳴ります。
もう一つの例としては、「大規模修繕に際し何から手を付けたらよいのか分からない」です。二つのケースとも、「理事会に専門家を呼んで一度話を聞いてみよう」という風にお願いをしています。理事会で決定し、私を呼ぶことになりましたら出向くことにしています。
訪問の際によくお話しすることは、何をするにしても「管理組合、すなわちマンションの権利者の意思として主体的な判断に基づいて進めるべきでしょう」「そのためには管理組合にとって役に立つ味方をそばに置くべきでしょう」とお話しします。
マンション運営は、民主的な手続きをベースとしなければなりませんが、ここという時はリーダーシップの発揮も必要となります。
大規模修繕に限らず世の中“人”がすることです。頼む方もしっかりした考えを持っていなければ、良い味方も付かないことを役員共通の認識とすべきでしょう。
昨日(9月21日)、島根県松江市に行ってきました。目的は管理組合様からのご要請で、居住者様を対象とした勉強会です。
32戸のマンションなのだが、勉強会に参加された方が二十数名で、まずこの参加熱意に驚かされました。マンションの大半が無関心を嘆かれているのが現実の中で。
ご訪問したマンションの様子を拝見すると、やはり和気あいあいとした理事会の活発な活動です。特に小規模のマンションの場合、役員を経験する機会も増え、それにつれリーダーシップをきちんと発揮される方も現れるからでしょう。
勉強会の後30分ほど、理事会や修繕委員会の方が十数名残られ、小生を交えた質疑応答ならびに意見交換が行われました。
おそらくこのような活動が続く限り、こちらのマンションは暮らしやすいマンションであり続けるのだろうと思います。
最近管理組合からお声掛り頂いて訪問する機会が増えました。それも岡山にとどまらず、四国や広島、山陰です。常々管理組合の方にお願いしているのは、理事会で相談のうえ「外部の専門家を呼んでみよう」といった合意がなされたら、出向いて行くことをお伝えしています。ぜひ小生を呼びつける際には、理事会の手続きをお願いいたします。初回の1回は無料手弁当です。
一般の方が契約書を取り交わすことはあまりないことかもしれません。でも私たちの生活の中では契約書に代わる、取扱い説明書や注意事項を記した文書には多く振れる機会は多くあると思います。
建築の生産現場に携わる私たちは、契約書を取り交わすことは日常の事です。委託契約書・工事請負契約書などです。現場の監理に使用する設計図書に加え、契約書や現場説明書なども一冊に編刷して監理業務にあたります。
時々工事施工者の現場担当者(現場代理人)の方が、契約事項を見落とすことがあるので、この辺りにも施工品質のチェックと合わせて気を付けなければならないのです。
マンションにおいては、管理組合と管理業者の間で、管理委託契約書を取り交わします。当然双方の合意事項を文書化したのが、契約書であり契約事項の履行義務がお互いにあります。だから契約事項が適正に履行されているか否かのチェックを、当事者同士で確認することは大変重要なことなのです。
残念ながらマンションの場合によくお聞きする話が、管理業者の不満です。契約書に基づいて権利義務を履行することが定められています。契約事項に忠実であることが大原則となります。そこには緊張感があって然るべきでしょう。
管理業者との関係は、「お付き合いではなく取引である」といった認識が希薄なような気がします。このことを認識していれば、契約事項にない提案などの適否は気付かれるはずです。
政府は国土強靭化政策として、建設インフラを強化しようと検討しているものの、現場では技術者や現場で施工する職人さんが不足してなかなか思うように進まない状況となっている。
そこで建設関連の人件費の適正化も検討事項となっているが、これも市場の実勢に馴染むまでには至っていない。併せて資材の高騰もあり建設業界の利益確保の点も改善されてはいないようである。
リーマンショック以降と人口減少は市場の縮小を予測させ、各企業はなかなか積極的に設備投資や人材確保を進めるには慎重になっている。つまりやらなければならない事業(仕事)はたくさんあるのだが、いつまた何時リーマンショックのような経済変動が起こるとも限らないのでは、安心して未来への備えができない。これが委縮している今の状況かなと思われる。
このような状況ということで、マンションの大規模修繕工事にもその影響は出てきている。例えば現場の所長がいない、職人がいない。だから工事の着工時期を示してもその通りに手配ができない。やがては工事コストが高騰するといったことまで生じかねない。
建設業界も混乱期には必ず全く新しい発想の経営者が登場するものである。過去を否定し、現状に疑問を抱くことから、より時代にマッチしたやり方が見えてくるのかもしれない、そのためには未来に挑戦する勇気こそが最大の突破力となるのでしょう。
マンションの管理組合の役員にとって大規模修繕工事は大きな負担となります。通常の管理運営であればその負担はさほどではないでしょうが、大規模修繕は人生で何度も経験するものではありません。
少し大規模修繕の事を考えてみますと、準備に始まりそして終わりまでの期間が任期中で片付くものではなく長期にわたることです。そして居住者の合意形成に神経を使うことでしょう。また工事中のイメージが湧かないこともあって、修繕委員会・理事会・総会の進め方、さらには施工業者をどのようにして決定すればいいのか、工事の手抜きは心配ないかなどなど。心配事は尽きません。
私たちはマンションの大規模修繕工事に限らず、社会生活を送るうえで、節目節目では誰を味方に付けるかで行く末が決まるといっても過言ではないと思います。
大規模修繕でも経験が豊富で優秀な人が味方に付けば、役員の方の負担と責任はかなり緩和されると思います。工事全般のすべての手順を示し、管理組合として意思決定しなければならない事項とタイミングなどの理解です。そして工事の内容と予算金額の調整、更には施工業者選定と施工品質の審査。工事に付帯する仮の駐車場の確保など、すべての道筋の案内をやってくれるはずです。
ここで味方の見つけ方が問われます。先ず会社を基準に選ぶのか人を基準に選ぶかです。よくあるのが企業イメージとかブランドです。私たちの経験では、大規模修繕に限らず大概のことは会社ではなく人の能力で行うものです。だから担当する人の力量を図ることが先決でしょう。他方、所属する会社の社会に向けての姿勢にも目を向ける必要もあります。
更には味方に委託する金額が高いか安いかです。この高い安いは誰でもわかる基準です。ここで大切なのは、人の能力を活用して管理組合の負担を減らしながら、より高品質の大規模修繕工事を実現させるためには、何が必要で、どんなことに気を付けなければならないかがお分かりいただけると思います。「委託金額が比較して安いから、安い方に決めます」、このような安易な考えでは、本当に失敗しない大規模修繕を望んでいるのかどうかが疑われます。安いのは安いなりの何かがあるのではないか?このような視点で考えることも必要でしょう。
やはり明確な選定基準に沿って、「この人だったら任せて大丈夫」だと選定経過と理由を、管理組合(区分所有者)に対し明確に説明できる能力が役員の方にも問われているのでしょう。任された人は当然のこと、任した発注者責任もしっかり自覚しなければならないのです。
大規模修繕工事の成否は、優れた味方の選定にかかっています。ここを間違うとマンション内のコミュニティさえも壊れてしまう危険をはらんでいます。