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建物は建てた瞬間から劣化が始まります。そしてその劣化は年数とともに増してゆきます。だから日常的なメンテナンスや修繕は欠かせません。

しかし日常的に維持保全活動を行っていても、およそ10年から15年程度経過してくると、大規模な点検と修繕工事が必要となります。これが計画修繕なのです。

分譲マンションの場合は、区分所有者によって毎月毎月大規模な修繕工事に備えて資金の積み立てを行っていることは、マンションを長く使い続けるうえでは大変よくできた制度だと思います。

大規模修繕工事の時期については、建物の外壁が汚れてきた。長期修繕計画で定められている時期が来たから。などが挙げられますが、やはり建物の劣化進行状況と劣化内容によって実態に即した判断が望ましいと思います。そのためにも長期修繕計画は5年程度ごとにチェックを行い、建物の実態と計画のずれを補正してゆくことは大切なことでしょう。

そこで毎月の積立金の適正額はいったいどのくらいなのだろうか?国土交通省公表の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によれば、専有床面積当たりの修繕積立金の額は、一般的なマンションを例にとると平均値として、 ①5,000㎡未満:218円/㎡・月 ②5,000~10,000㎡:202円/㎡・月 ③10,000㎡以上:178円/㎡・月となっている。

しかし実際は平均額ほどの積立金を実施しているマンションがどれ位あるのかはわかりませんが、マンションは第1回目より2回目、2回目より3回目と修繕項目も増え工事金額も増してきます。もちろん計画の中で修繕項目が不要となる、あるいは先延ばしできるなど、計画には不確定な要素が多くあります。だからと言って長期修繕計画に、不要な項目として削除した計画には資金的なリスクを伴います。

新築分譲時には購入負担低減のために、修繕積立金の一時払いや積立額を低く抑えている傾向がみられますが、5年程度経過した時点で将来を見越した長期修繕計画の見直しは欠かせないと思います。そして修繕計画の作成は、マンションの大規模修繕を熟知した専門家(建築士)が行うことも実態との整合性を求めるうえで大切かと思われます。

長計

 

多くのマンションで計画的な修繕を行うための費用として、毎月区分所有者が修繕積立金という名目でお金を負担しています。この大規模修繕工事に対し、管理会社などから「そろそろ築後10年が経過したので具体的な大規模修繕工の準備を始めた方がいいですよ」といった話が出てきて、管理組合の役員の方も「じゃあどのように進めたらいいのだろうか?」となるのが一般的かもしれません。

ここで大規模修繕工事に限らず、誰を味方に付けるかが問題となります。

修繕積立金の性格は、区分所有者が捻出した貴重なお金が原資となる工事です。だからお金の使い方に透明性が求められるのです。この点を十分認識している人を味方に付けることが大原則となるでしょう。もちろんマンションの管理運営に精通していて、なおかつ大規模修繕工事における技術的なことや、工事中の居住者への配慮が十分できることも味方選定のポイントとなるでしょう。

なぜ優秀な味方をつけるかと言いますと、管理組合本来の主体性を維持できるからです。つまり管理組合の意思を大規模修繕工事に反映させるためです。

優れた味方の力を活かすと。

①          管理組合の体制作りから運営まで適切なサポートが得られる

②          工事に関する専門的な技術と施工手順の構築をしてもらえる

③          工事施工者の選定の事務手続きから工事に関する施工品質の審査をやってもらえる

④          管理組合役員の負担軽減と混乱が生じないように、先手先手と手を打ってくれる

⑤          全ての記録を整備して、いつでも公開できるようにしてくれる

⑥          管理組合が納得できる主体性をもった大規模修繕工事が実現できる

このように考えてくれば、どのような人が味方として適しているのかがお分かり頂けると思います。

工事を請け負わなく管理組合の立場に立てて行動できる人です。

しかし残念なのは、人を選ぶのではなく会社のブランドやお付き合いで選ぶ誤りです。大規模修繕に限らずすべては人が行うことです。その人の考え方や能力さらにはやる気、そして相性が合うかどうかも大切となります。

味方を選ぶことが安易に行われている現状を見るにつけ大規模修繕の危うさを感じる場合もあります。現に他社を味方として大規模修繕工事が終了し、その後に管理組合からの投書とか愚痴を聞かされることもあるからです。

7月6日の午後1時30分から、大規模修繕工事の勉強会を岡山県立図書館で行います。会場で詳しくお話しさせていただきます。管理組合の方のご参加を期待しています。残り10席ほどとなりました。参加希望される方はご一報ください。

大規模修繕工事って何をするの?建物をきれいにすること?

綺麗にすることが大規模修繕工事の目的ではありません。目的は建物を劣化から守ることです。この辺りのことを管理組合の皆さんと意識の共有がなされていないと、混乱のもととなる場合があります。

限られた予算の中で工事を行うのだから当然だろうと思いますが、やはり折角足場を掛けての大工事なのだから、気持ちは綺麗にしたい。

建物を守るといった点で考えると、まず、危険と思しき剥落などの個所は絶対に改修を行わなければなりません。それから漏水などの事象の現れている部分は修繕します。更にできれば、放置しておけば将来建物にダメージを生じさせる部分の未然の改修です。この三つの考え方は大変重要となります。

多くの事例を見てきましたが、何かを塗布すれば当面はきれいになります。綺麗にはなっているが、肝心の部分の補修が不十分。例えば下地補修や防水層の剥離などです。

素人の人には隠れた部分の施工品質を見抜く力はありません。ペンキを塗ることが大規模修繕工事ではないのです。塗装業者は塗装を、防水業者は防水をやりたがります。それを生業としているからと言えばそうでしょう。

建物を守るといった点でいえば、設備や付帯施設も含めたトータルで考えなければなりません。場合によれば保守点検を容易にするための改善、使い勝手の悪いところはの改良をする。このような視点がなければ綺麗にすることに捉われて肝心なことを置き忘れるかもしれません。

大規模修繕工事は保全行為の一部なのだということを認識する必要があります。「守りながら綺麗にする」。このことが求められるポリシーです。

マンション管理の一部または全部を外部の会社に委託しているケースが殆どでしょう。まれに完全自主管理のマンションもあります。概して自主管理のマンションの区分所有者の方の方が意識は高いように感じます。

管理を委託するにしても、「自分たちのマンションは自分たちで守る」。このような気概が薄く無関心でいると、余分な出費がどんどん膨らんでゆき、気が付けば満足な大規模修繕や必要な日常対応が困難となります。

そこで委託先として良い管理会社とはどんな会社なのだろう?そこでいくつかの点を列記してみました。

1.とにかくマンションを良くしようと行動を起こす管理会社

2.理事会や総会の出席者を多くしようと行動する管理会社

3.滞納問題を少なくする努力と、滞納が発生した時の対応マニュアルを事前に提案する管理会社

4.委託契約に忠実で、契約にないことを強引に提案しない管理会社

5.コンプライアンス(法令順守)がしっかりしている管理会社

以上の点が思い付くが、いくら管理会社が優れた提案をしても、それを受け止めるだけの感性のない管理組合だとなかなか良いマンションになりません。やはりパートナーと一緒になって、互いに協調の関係が問われるのは言うまでもありません。

マンションの大規模修繕工事には工事とは直接関係しないが、必ず対応しなければならないことがあります。それは駐車場の移動とバルコニーの片づけです。

車の移動は、工事に際し駐車場の一部が使用できなくなるために、該当する駐車車両の移動が工事期間中必要となるものです。私たちは設計図書の中に、仮設計画でどの部分で何台の車両移動が必要となるかを示し、管理組合の役員さんと協議します。そして該当する方の車両移動をお願いすることになるのです。

さらに移動する車両の仮の駐車場の費用は設計図書に織り込みます。それを受けて工事業者は管理組合の役員さんと協議しながら、近くて適当な場所を探して仮駐車場の確保となるのです。当然移動される方の駐車料金は従前どおりですが、ここで管理組合としては移動される方の負担軽減と協力の意味で、駐車料金の手当的の措置を考慮されるのが一般的です。したがって、管理組合の役員の方々は駐車場確保の直接的な苦労はないと言えます。

一方、バルコニーの片づけですが、私たちは設計段階で居住者用の仮の倉庫を提案しています。もちろん設置費用は工事費の中に織り込んで業者に設置してもらい、仮倉庫の管理は管理組合で行っていただきます。でもバルコニーにはいろんなものがあります。時には仮倉庫に移動できなくて、仮設足場に仮置きしていることもあります。

問題は高齢者の多いマンションです。バルコニーの片づけが自分ではできない場合があるので、その時は工事請負業者のアシストが必要となります。時には移動や処分費が発生することもあります。もちろん工事に先立つバルコニーの片づけの状況等の情報は工事関係者で共有し、関係者で協力した中で進めてゆきます。

その他、洗濯物のバルコニーへの使用可否は、指摘がなくてもどの業者でも適切に対応しているようです。

車の移動やバルコニーの片づけなどは、大規模修繕工事にはついて回ることなので、管理組合の役員さんや工事業者の作業と位置付けてしまうとなかなか困難な対応となってしまうのです。

そのためには設計監理者も、円滑に対応できるよう事前の準備と協力は欠かせません。

当社はおよそ50年の社歴がありますが、お客様は殆ど建設関連の会社ではなく、実際に建築する施主(建築主)との直接契約です。つまりどこかの企業の下請けではないのです。

平成13年からマンションの大規模修繕工事の調査診断・設計監理の業務を手掛けてきましたが、当該の大規模修繕工事に直接は関係ない立場の管理会社(一部の管理会社)から、手数料なるものが必要だとして請求された経験があります。(もちろん言われなき要求のため不払い)

このことは特定の施工業者に対しても、一部の管理会社であると思いますが、業者から管理会社に手数料なるものの支払いが行われていると聞いています。この事をどうして知りえるかと言いますと、数多くの施工会社と工事監理の関係で、時には雑談をしますから、ボヤキ的に飛び出す話なのです。

その手数料の取引(ショバ代)にはレッキとした契約書が存在している場合もあるようです。しかも管理会社の下請けでもないのに。もっと考えるなら、どのような経緯があって手数料の支払い義務を求められる契約が生じたのかです。手数料の額は工事額の1割程度でしょう。考えなくても分かる大変大きな金額です。

でも、大半の管理会社は本業の管理サービスをしっかりして、「顧客満足度を維持する」といった考えを持っています。

仮設足場の種類

マンションに限らずどのような工事でも必要となるものが仮設足場です。

仮設足場を考えると、高層建物などでは上部から吊るし、上下に移動させるあるいは横移動をさせるゴンドラ形式のものと、よく見かける一般的な地上から組み立てる足場があります。もちろん状況によっては多様な組み合わせがされます。

一般的な仮設足場は、関係法令によってその設置基準などが定められています。足場を構成する骨組みの種類も各種ありますが、マンションの大規模修繕工事の場合、当社は作業性とコストなどの面で枠組み足場を標準的に指定しています。枠組み足場の幅も90センチ幅のもので組み立てることを設計図書に明記します。

足場材の指定基準として、組み立て時の騒音と堅牢性などです。マンションの居住者の方には体調不良などでお休みの方がいるかもしれません。お住まいの方への工事中の影響緩和の配慮が必要となります。特に騒音です。

また、足場材の倒壊防止のために外壁面などに固定します。その際に外壁にボルトで固定するための穴をあけることも、建物の所有管理はマンション管理組合ですので、その了解が必要となります。(解体時には穴埋めをします)

必要に応じて足場下の通行者等への安全確保のために、上部に突き出した庇(アサガオ)といったものも設置する場合があります。

足場材の外周には、物体の落下防止や塗料材の飛散防止の措置として、シートを張ります。このシートも多種多様で、防音シート・通常のシート・メッシュシート・カヤシートなどがあります。マンションなどの大規模修繕工事の場合、当社は白色の新品のカヤシートを設計図書で指定しています。最近では黒色のシートが良く使用されるようになりました。

いずれにせよ、シートを張り巡らせると居室内が暗くなります。その度合いがひどくなると居住している方のストレスのもととなるため、日中でも晴天時には照明がなくても生活できる程度の明るさ確保が必要と考えてカヤシートを選定します。

足場に限らず仮設物は発注者にとって、工事後にカタチとして残らないが、工事には欠かせない費用となります。可能な限り合理的な考えで計画することも大切です。

上の写真は街角で見かける足場のシートです。これでは電気を点けなければ暗くストレスです。

下の写真2枚は当社指定の白色カヤシートです。足場の骨組みが見えます。バルコニーも明るい。

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弊社の業歴の中で、時代の変化に応じてサービスを提供する業務の中身を拡大してきました。新築の設計監理から建てた後の大規模修繕へ、そして建てた後にかかるランニングコストの適正化、建築以外の分野のコンサルタントなどです。

直面していることは、マンション分野の大規模修繕のコンサルタントと企業向けの経費削減支援をミックスした新しい分野のサービスをカタチにしようと奮闘しています。

どのようなサービスを考えても、お客様に響かなければ絵にも描いてもいないモチにすぎません。響いていただくためには、弊社が何を考えて、お客様にとってどのようなメリットがあるのかを明確に伝えなければなりません。しかしお伝えすることは大変難しいのです。

大企業のように優秀なスタッフと資金に任せ、絨緞爆撃のような広報活動はできません。私たちができるのは地上での局地戦であり、口コミ・インターネット・自らの体を使ったビラまき位でしょう。

でも、紙媒体をおろそかにすることは決してできません。紙面のデザインや文字の使い方など、大変なエネルギーを要します。

幸いにも弊社は過去に、マンション管理組合向けのセミナーチラシなどを自分たちで作ってきました。このような経験が新しい分野のサービスのメリットを伝える資料作成に役立っています。

もう少しすれば新規分野の資料が完成し、その資料を携えて未来のお客様のところに出向く活動を開始します。計画のサービスはリリース間近です。

もしかしたら、新しいサービスとして、広報活動のコンサルタントもできるかも。

工事現場は危険だから一般の人は立ち入れません。本当にそうなのか?

施工業者の現場責任者の人は工事関係者以外の人が工事現場に立ち入ることを避ける傾向があるような気がします。でも現在の安全管理はかなりの水準にあり、建設現場とて工場の中と同じレベルの安全対策を求められているのです。

私たちの考えは、発注の立場にある人が自分の所有管理している(所有管理する)建物の細部まで工事の出来具合等に対し納得をすることは重要だとしています。つまり工事現場は建設関係の特殊な空間だといった感覚は適切ではないとしているのです。

マンションの大規模修繕工事の際には、適切なタイミングで管理組合の方と一緒に足場に上がり工事の状況を確認していただきます。そしてポイントポイントでなぜこのような劣化が生じたのか、その処置をどのような考えで行っているのかを説明しています。多くの方は自分の所有している(管理している)建物の通常では見ることができない部分を確認できます。このことは建物に対する愛着も増してくる効果も期待できるのです。

当然保険に加入していただくことをお勧めしています。期間と人数限定の保険で負担も少額です。

(写真はリッチde鳴門Ⅲの現場です)

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今年一月から工事が始まっているプレジデント後楽園の大規模修繕工事が本格的に進んでいます。工事場所は中区役所の道を挟んで南側です。

戸数92戸のマンションで、築40年が経過する岡山で2番目くらいの古いマンションです。

これまでに幾度となく大規模な修繕工事が行われてきているが、今回の工事は防水工事と外壁の塗装工事が主となるが、「今回はきっちりとした工事で将来的にも安心できる工事にしたい」というのが管理組合の共通した考えです。

その他の工事としては、バルコニーと階段の床に塩ビシートを貼る。剥き出しの屋外階段の上に雨除けの屋根を取り付ける。

工事の内容はすべて雨水対策が主です。建物の劣化を促進させる要因である雨水からの防御対策が一番だからです。そのためには確実に所期の目的のために多少美観的な部分は我慢していただく場面も生じます。当然このような点は事前に管理組合の方とも共通の認識が必要となります。

特徴的なのは建物形状が入り組んでいるため、屋上防水の納まりが困難な部分があるのでメーカーの方と現場の責任者、そして監理者の3社が工事前に事前協議をして工事の要領を決めています。

メーカーの方がただ製品を納入するだけでなく、工事の要領と仕様に関わってもらえるのは大変ありがたいことです。

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